本当は知らないと怖い、金融機関との付き合い方 生命保険会社編

2021年11月29日

ご興味を持っていただきありがとうございます。孤高のファイナンシャルプランナーX(エックス)です。
今回のお題は「金融機関との付き合い方 生命保険会社編」です。「本当は知らないと怖い」と前置きしたのは、以前金融機関に勤めていた人間として、「金融機関は本音としてどう考えるのか」ということを知っていただこうと思ったからです。将来あなたが様々な金融機関とお付き合いをされる場合に、あなたの気付かないことであなたが困らなくて済むように、私なりの経験からお話ししてみたいと思います。

あなたがお付き合いする可能性のある主だった金融機関といえば、銀行、証券会社、保険会社などでしょうか。その中からまず最初は、私の古巣の「生命保険会社編」をお届けいたします。この記事を読むことで、あなたが生命保険を選ぶ際の参考になれば幸いです。

Rickfan Wilsen on Pixabay

各生命保険会社の違いはどこにあるのか?

この記事を執筆するのにあたって、改めて生命保険会社を調べてみました。2021年9月現在で我が国で登録・認可を受けている生命保険会社は42社あるそうです(引用・金融庁のホームページより)。正直申し上げて、以前業界に身を置いていた私でさえも42社すべての生命保険会社はわかりません(苦笑)。


この数が多いか少ないかはさておき、結論から申し上げれば、(私もすべての保険会社とお付き合いがあるわけではありませんが、)各生命保険会社によって違いは存在すると考えます。



では、その違いはなんでしょうか?



あなたは「もちろん、会社によって生命保険の商品がそれぞれ違うことだろう。」と思うかもしれません。

確かに、各社様々な商品を提供しています。しかし、あくまでも私見ですが、率直に言ってその「商品の違い」は大した違いではありません。
もう一度言います。商品の違いなどは「違いのうちに入らないくらいわずかな違い」と私は思っています。(各保険会社で日々一生懸命に商品開発をしている方、ごめんなさい)



もし、今あなたが保険選びの最中で、各社の設計書やパンフレットを前に悩んでいらっしゃるとしたら、あなたの「えー!?今まで悩んでいた時間は何だったの!?」という心の声が聞こえてきそうです(汗)
もちろん、厳密にいえば各社の商品に「細かい差」はあります。でも、私にとってはそれが保険を選ぶ際の決定打にはならないくらいの「些細な差」なのです。


実は、これには2つの理由があります。

Mabel Amber, who will one day on Pixabay


生命保険の商品にはどこの保険会社も大差はない!?


私が、生命保険の商品には各社決定的な大差がないと考える理由は次の2つです。


①生命保険には大きく分けて3種類の「型」しかないこと


詳しくは、別の機会でお知らせしようと思っていますが、世の中にあるほとんどの生命保険は、突き詰めると大きく分けて3種類の「型」しかありません。つまり、色々あるように思える生命保険も、ほとんどはその3つの「型」のどれかの組み合わせになってしまうのです。42社の生命保険会社がありながら、商品は大まかに3種類しかないのをあなたは不思議に思うかもしれません。これは「保険の仕組み」そのものに起因するので、保険会社の怠慢でもないのです。ただ、いずれにしても各社その3つの「型」の延長線の上で商品開発を競っているだけなのです。


②生命保険は、金融庁の許認可商品であること


2つ目の理由は、生命保険が「国の許認可商品である」ということです。我が国の生命保険会社の監督官庁は金融庁ですので、各社は商品開発を行う上で、必ず金融庁にお伺いを立てて、それぞれの商品ごとに許認可をもらわなければなりません。つまり、得体のわからない商品をどこかの保険会社が勝手に販売して消費者が困るのを防ぐために、国として商品にお墨付きを与えている訳です。
そういう意味で許認可が必要ということはとても大切なことなのですが、言い換えれば「各社として明確な差を出すのが難しい」ということにも繋がります。金融庁としては、例えば「1社だけ利率がものすごく飛び抜けて良い生命保険」などを認可しづらく、どうしても差が出にくいのです。その結果、金融庁としては「なるべく各社の商品に明らかな差を出したくない」ということになるのかもしれません。




余談ですが、一般の商品ではヒット商品が出ると、そのヒット商品を出した会社はとても喜ばしいですよね。さらに増産して大量に販売するのがオーソドックスだと思います。
ところが、生命保険の世界ではヒット商品(=自社の予想を超えて売れる生命保険)が出ると「販売停止」といってその生命保険の販売を止めてしまいます。保険を売っている立場からすれば、売れる保険ならさらにどんどん売ればいいのに、とも思いますよね。
そのわけは、生命保険がお客様にとっては将来お金(=保険金や給付金など)を受け取れる「資産」になるけれども、生命保険会社にとっては将来お客様へお金(=保険金や給付金など)を支払う準備をしなければならない「負債」を抱えることになるからです。
当初の予想外に売れるということは、当初の予想を超えたお金を保険会社が準備しなければならなくなってしまうので、販売そのものを止めてしまうのです。
生命保険会社にとっては、ヒット商品は「うれしい悲鳴」ではなく、「本当の悲鳴」になってしまうんですね(笑)


生命保険で「今までにない画期的な保険」が出にくいのはこういった背景のためです。
各社の商品開発の担当者はこの2つの制約の中で「わずかな違い」を出すために日々奮闘しているのです。
(個人的には、その制約の中できめ細かな商品開発をしている方々は本当にすごいなと思います)



少々話が脱線しましたが、では、商品の違い以上に私が考える「生命保険会社ごとの違い」とは何でしょうか?

Free-Photos on Pixabay

生命保険会社の”本当は怖い”本音

「生命保険会社ごとの違い」を知る上で、「生命保険会社の本音」を考えてみましょう。
生命保険会社の本音はどういったところにあるのでしょうか。


これには、生命保険会社がどんな仕組みで利益を上げているのか、ということがヒントになります。
あなたは、生命保険会社がどのように利益を上げているかご存知ですか?
私は恥ずかしながら、生命保険会社に入社するまではよくわかっていませんでした(笑)



生命保険会社には利益を上げる方法が主に3つあります。(これを生命保険の三利源(さんりげん)と言います)
大まかな説明をすると以下の通りです。


①利差益(りさえき)
生命保険会社は、多くのお客様からお金(=保険料)をお預かりして、日々色々な方法で資産運用しています。この運用で得られた利益のうち、お客様へ約束する利率(これを予定利率と言います)の分を除いたものが利益となります。生命保険会社にとっては、「予定利率が低い契約」が多ければ多いほど、経営は楽になります。なお、予定利率はその生命保険を契約した日によって決まり、契約中は原則として変わることはありません。現在と比べると、バブル期の契約に予定利率が高い契約が多いですね。
逆にお客様に約束する分より、運用で得られた利益が少ないと「利差損」になります。ニュースでは「逆ざや」などと報道されます。もし運用が思うようにできず保険会社に「利差損」が毎年続くようだと、じわじわと経営を圧迫することになります。

②費差益(ひさえき)
これは生命保険業という商売を維持するコストのことです。生命保険には仕入れがありませんので、主なものには人件費や家賃・水道光熱費、システム開発費、その維持費などになります。これは他のご商売でも一緒だと思いますが、人員のリストラや家賃の見直しなど、経費節減ができればその分利益が増える、ということになります。経費が予定よりオーバーすれば「費差損」ですね。

③死差益(しさえき)
これは生命保険会社独特の利益になります。生命保険というのは多くの方が少しずつお金を出し合って、死亡や入院などで困った方にまとまったお金が届く「相互扶助」の精神が基本になっています。そのため、生命保険会社はそういったお客様へお金を届けるために、「この契約件数だと今年はこれくらいお客様へ保険金・給付金が必要だろう」と計算をして、まとまったお金をあらかじめ準備しておきます。つまり、死差益とは「当初想定していたよりも亡くなる方や病気で入院する方が少なかったので、そういった時のお支払い用に保険会社が準備しておいたお金が余った」という利益になります。逆に言えば、「当初の想定よりも多くの方が亡くなったり、病気で入院した」と言う事態は「死差損」と言うことになります。


以上のことから見えてくる「生命保険会社の本音」を考えてみましょう。


生命保険会社の立場から考えれば、


①利差益を稼ぐには、なるべくお客様との約束の利率が低い保険契約(=予定利率が低い契約)を増やし、なるべく多くのお金(=顧客から預かる保険料)で運用した方が有利

②費差益を稼ぐには、なるべく人件費・家賃などの経費を節減した方が有利

③死差益を稼ぐには、なるべく健康で、すぐに亡くならない方や病気にならない方の契約を集めた方が有利





つまり、生命保険会社の本音としては、



なるべく予定利率の低い契約で、なるべく多くの保険料を、なるべく多くの健康な方からお預かりし、なるべく少ない人件費で事業をする。



ということに尽きるのです。



もちろん、生命保険業もボランティアではなく商売ですから、「適正な利益」は必要です。また、色々なご商売にも「お客様には言いにくい本音」があることは否定しません。


しかし、(単なる思い込みだ、とお叱りを受けてしまうかもしれませんが)ここで仮に保険会社に悪意があるとしたらどうでしょう。あるいは悪意がなくとも、売り上げが伸び悩み、会社の体力が弱っていて、苦しんでいるとしたら・・・



「できるだけ利差益を上げるため、お客様には予定利率の高い商品から予定利率の低い商品に入り直してもらおう」


→「新商品が出ました」と担当の方から頻繁に保険の見直しの提案を受けたことはありませんか?


「できるだけ費差益を上げるため、契約を集めた後は早く社員に辞めてもらって、人件費節減をしよう」

→「生命保険のセールスパーソンはすぐ辞めてしまう」と耳にしたことはありませんか?


「できるだけ死差益を上げるため、保険金・給付金の支払い条件のチェックを意図的に厳しくしよう」

→「保険会社の保険金不払い問題」というニュースを見たことはありませんか?




繰り返しますが、あくまでも仮定の話です。
「仮定の話をネガティブに考えすぎ」、と言われればそれまでですが、生命保険会社の本音が実際にはわからないだけに、我々も見抜く目を養わなければいけません。ちなみに、あなたはどう思われますか?
(当然ですが、新商品の提案が理にかなっていて、メリット・デメリットを理解されていれば構いません)


本当に怖いのは、商品選びで損をしてしまうより、こんな風に考える不誠実な生命保険会社が世の中に出てきてしまうことではないかと私は思うのです。
(もちろん、そうならないために監督官庁の存在や各種の規制があるのですが・・・)

インターネットで検索すると「どの保険会社の商品が良いか」という保険の商品選びについての比較記事が山ほど出てきます。最近では「さまざまな保険会社の商品から、あなたに最適な商品を組み合わせて各社のいいとこ取りの提案をします」といった保険代理店もよく目にしますね。
確かに聞こえはいいかもしれませんが、先ほども申し上げた通り、生命保険は金融庁の許認可商品です。細かい差はあれど、商品に重大な欠陥や、他と比べて明らかな損失はありません。
あなたの「商品選びの労力」を「保険会社選びの労力」に振り向ければ、結果として商品選びは楽になるはずです。


私はこの「先に商品選びありき」の風潮に強い違和感を持っています。
しかし、この記事のように「保険会社選び」について考えている記事はまず見ません。仮にあったとしても「経営状態の良い保険会社を選ぼう」という、保険会社の経営状態にフォーカスした記事ばかりです。
もちろん経営状態が悪いよりはいいに越したことはありませんが、格付けの高い会社や、規模の大きい会社が誠実な経営をしているかどうかは全く別問題です。ここは本質を見誤ってはいけません。



生命保険商品の違いの見極めよりも、生命保険会社の違いの見極めの方が重要と思うのは私だけでしょうか?

Simon Kadula on Pixabay

あなたに合う生命保険会社を見つけるには?


このような記事を書くと、「だから生命保険会社は信用できない」とか、「保険は闇が深い」という議論になってしまうかもしれません。ただ、私が申し上げたいのは、保険会社を信用するな、生命保険は入るだけムダだ、ということではありません。


なぜ、私が「生命保険の商品選び」よりも「生命保険の会社選び」の方が先だ、と考えるのかは生命保険という商品が世の中ではとても特殊な商品だからです。
一般的な商品、例えば洋服であれば手にとって試着ができますし、車ならば試乗ができます。家電量販店に行けば見本がありますし、マンションギャラリーだってあります。そして使ってみて気に入らなければ、返品や交換、買い替えも可能です。今はオークションやフリマアプリで売ることだってできます。(さすがに車やマンションはすぐに買い替え、というわけにはいきませんが)
いずれにせよ、各社知恵を絞ってなるべく「思ったものと違った」というミスマッチを防ぐ努力をしています。



それに対して生命保険はどうでしょうか。まず、商品そのものを手にとって比べることができません。当然お試し利用はできませんし、値引き・割引もありません。返品・交換も効きません(入り直しはできますが、その間支払った保険料は戻りません)。当たり前ですが、オークションやフリマでも売れません。他にもできないこと尽くしです。



そして何よりも特殊なのは、生命保険という商品の本当の価値がわかるのが、大切な人の死亡やあなた自身の入院など「人生のピンチの時」だからです。
その時に「あれ、思っていたものと違った」では取り返しがつかないのです。
だからこそ、商品価値を発揮できる(=お客様のピンチを救う)生命保険会社を選ぶことが大切なのです。


近江商人が商売の基本的な考え方を説いた有名な言葉に「三方よし(さんぽうよし)」というものがあります。



売り手よし、買い手よし、世間よし



売る方と買う方がお互い満足するのは当然として、それだけではなく、その取引が世の中(=第三者)から見ても適正なものであることが大切、と私は解釈しています。




私は、「生命保険は、先が見えない未来を乗り切るために人類が考え出した叡智の結晶」だと思います。
生命保険というものは、世の中になくてはならない本当に素晴らしい発明です。



そして生命保険会社の役割は「お客様からお預かりしたお金を大切に取り扱う管理人」だと思っています。
だからこそ、全ての生命保険会社が誠実であって欲しいと思います。
人類の素晴らしい発明に、あなたが預けたその大切なお金の管理人が「三方よし」を大切にする管理人であるように願っています。



今回の記事は、「どの商品にするか」という枝葉末節の議論ではなく、そもそも生命保険業という事業をどのように考えている生命保険会社と付き合うのかという本質的な目線のご提案でした。



実を言うと、この後に具体的な生命保険会社の選び方を書こうと思っていましたが、今回は古巣の話ということで、私も力が入って少々記事が長くなってしまいました(笑)



申し訳ありませんが、あなたに合う生命保険会社を見つける具体的な方法については、また別の機会に。



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今回も最後までお読みいただき、どうもありがとうございます。また次の記事でお目にかかりましょう。


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