プロスポーツ選手、トップアスリートのキャリア形成に思うこと 現役時から引退後まで数十年を寄り添えるお金のプロの存在の大切さ

2021年9月21日

ご興味を持っていただきありがとうございます。孤高のファイナンシャルプランナーX(エックス)です。
今回のお題は「プロスポーツ選手・トップアスリートのキャリア形成」についてです。
私はファイナンシャルプランナーとして、プロスポーツ選手やトップアスリートの現役中、引退後にかかわらずキャリア支援に力を入れております。はじめにお目にかかるきっかけはファイナンスの話が中心だとしても、実際のご相談内容はお金の悩みにとどまらず、仕事や家族、将来の不安など、多岐にわたります。そんな現場の中で、プロスポーツ選手・トップアスリートの方の現役中から引退後までの数十年スパンにわたるキャリア形成を考える上で、私なりに思うことを記事にしたいと思います。


守秘義務の関係で特定の選手のお話をすることはできませんが、この記事が、ご自身のキャリアについて考えているプロ選手、アスリートの方や、これからプロ選手を目指す方の、行動や思考の変化を促すきっかけになれば私としてもとても嬉しい限りです。

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プロスポーツ選手・トップアスリートのすごさ

最近では国内のみならず、世界で活躍する日本選手が珍しくない時代になりました。野球、サッカー、テニス、ゴルフ、バスケットボール・・・。本当に素晴らしいことだと思います。
日本や世界で活躍するだけでもすごい!と思いますが、この記事を書くのにあたり改めてデータからプロ選手・トップアスリートのすごさを調べてみました。この記事ではプロ野球選手を例にとってみます。


「プロ野球選手って、ほんの一握りの人しかなれないんだろうなあ。」と漠然とは思っていましたが、何か参考になるデータはないか、探してみました。
Googleで「プロ野球選手 確率」と検索すると、色々な方が記事を書かれていて、とても勉強になります。便利な世の中になりました(笑)
今回は、色々な記事の中から、「日テレジータス」の記事を参考にさせていただきました。

日テレジータス Center Line より
https://www.gtasu.com/special/centerline/019.html


色々なデータの取り方があると思いますが、この記事では2019年度で


プロ野球選手になれる確率は、わずか0.16%



と書いてあるではありませんか!



ある程度予想はしていたものの、その予想を超えるとてつもない確率です。
2019年度に卒業年度を迎えた高校・大学の野球部員が合計54,624人。その中でドラフト指名を受けた選手は12球団合わせて74名、プラス育成指名の選手を含めても86名だそうです。(社会人は除く)

つまり、86÷54,624×100=0.1574…..%、すなわち約0.16%となるのです。
もちろん、全選手がプロ志望と言うわけではないと思いますが、それでもやはりこの数字には驚かされます。


0.16%ということは、高校・大学の野球部員が1000人集まった中で1.6人(2人いないということですね)、10,000人にわずか16人しかいないと言うことになります。本当に「選び抜かれた選手」の方達なのですね。それでも、これはあくまでも「プロ野球球団の所属選手になっただけ」で、実際はその一流選手たちの中でさらに一軍に選ばれて、さらにレギュラーを獲得、さらに一定以上の成績を出し続ける・・・となると考えただけでも気が遠くなりそうです。


そうなのです、


「大好きな野球を続けて、しかもトップ0.16%の選手になれた!これでもう安泰だ!」


と言えないところがプロの厳しい世界です。
本当にすごい世界があるものです。




別の記事で、興味深いものを見つけました。

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0.16%の超一流でも、待ち受ける厳しい現実

夢がかなって、念願のプロ野球選手になりました。
さて、その念願のプロ野球選手を何年くらい続けられるのでしょう。

ベースボール専門メディア、Full-Countの記事から引用させていただきます。

Full-Countの記事より引用「プロ野球選手で10年生き残れる確率は?在籍年数の変遷で検証」より
https://full-count.jp/2019/01/13/post280146/

この記事によれば、2000〜2008年の平均在籍年数は8.6年、その中でも最も人数が多い在籍年数(最頻値)は4年だそうです。この間に海外移籍が珍しくなくなったり、社会人チームに元プロ選手が入団できるようになった要因もあるとはいえ、この年数は年々短くなっているとのこと。いわゆる選手の「壁」は4年を越せば、多少は長く続けられるようです。つまり平均して高卒なら約27歳、大卒でも約31歳そこそこで球団から「ご苦労さん」と言われてしまうのです。しかも多くの選手はそれよりも短く、高卒・大卒とも20代で球団を去ることになります。


20代〜30代前半で、プロ野球選手は「引退後のセカンドキャリア」という大きな転機を迎えることになるのです。



ほとんどのアスリートは、現役時代よりも圧倒的に長い引退後の生活が待っています。人生100年と言われる時代ですから、数十年の単位でしょう。しかも、現役時と比べて注目度も下がった中での新しい生活が始まるのです。
プロ野球選手であれば監督やコーチ、球団職員で残れれば恵まれていますが、こちらもまた狭き門です。あるいはプロ野球解説者という道もあるかもしれませんが、こちらもある程度の知名度は必要です。
引退後も野球で食べていくのは、もしかしたら現役の時よりもさらに厳しいかもしれません。


ここはやはり、長期にわたって寄り添える「良き相談相手」としてのお金のプロフェッショナルが必要だと思うのです。

Edar on Pixabay

プロ野球選手の懐具合

ここで、少々視点を変えて、プロ野球選手のお財布事情を考えてみたいと思います。
前の章では、プロ野球選手としての在籍年数の側面から厳しい現実を見てみました。


ここで、あなたはこう思いませんか?


「確かに、選手生命は長くないかもしれないけど、その間で一生分稼げればアリなんじゃないの?」と。

毎年、ドラフト会議や、契約更改の時期になると、ものすごい数字がニュースで踊りますよね。

「〇〇球団とドラフト1位指名選手が入団契約、契約金1億円、初年度年俸1000万円(推定)」
「〇〇選手が契約更改、今季より3000万円アップの年俸2億円プラス出来高払い5000万円(推定)」


私は、ついつい、「税金はいくらくらいかな」「代理人はついているのかな」なんて考えてしまうのが悪い癖です(笑)



少し話がそれますが、あなたはプロ野球選手の契約の中身がどうなっているのか考えたことはありますか?
会社員の方なら、会社との雇用契約で年間休日〇〇日、所定労働時間〇〇時間、基本給〇〇万円、などとなると思いますが、プロ野球選手の場合はどうでしょう。「年間契約」っていうけど、元旦から大晦日までなのでしょうか。


実は、プロ野球選手の契約書の雛形が日本プロ野球選手会の公式ホームページに掲載されています。

統一契約書様式 2018年度版 日本プロ野球選手会ホームページより
http://jpbpa.net/up_pdf/1620708754-568754.pdf

もちろん、実際には複数年契約や出来高払いなど、個々の選手によって様々な契約がありますが、基本のたたき台になる様式ですので、参考にしてみましょう。



一部要約して抜粋しますと、例えば、第3条では、「選手に支払われる報酬は2月1日から11月30日までの稼働に対して支払われる」とあります。つまり、プロ野球選手のお仕事は2月1日から11月30日までの10ヶ月(約300日)なんですね。
もし契約更改に時間がかかって、「契約が2月1日以降にずれ込んだりした場合は1日あたり300分の1減額する」とあります。日給換算で計算するのですね。


ということで、12月1日から1月31日までは選手はお休みです。その他には、用具について、ボールは球団持ち、ユニフォームは貸与でそれ以外の用具は選手の自腹である(第8条)とか、移籍で契約が譲渡された場合は、鉄道での移動距離が1000kmまでは4日以内に新しい球団事務所に顔を出さないといけない(第23条)、移籍の引越し代は球団から選手に200万円支給される(第24条)など、読み込んでみるのも面白いかもしれません。



話を元に戻します。
こうした一生分の年俸を稼いでしまう華やかな選手がいる陰で、なかなか報われない選手がいるのもプロの世界の現実です。
先程の日テレジータスの記事によれば、育成選手時代の巨人の松原聖弥外野手は、年俸240万円だったそうです。手取りではなく、年俸ですから、ここから税金を払って、用具を揃えて、などとしていけばとても苦しかったことでしょう。彼は報われることができましたが、人知れず去っていく選手もたくさんいます。


でも、この人知れず去っていく選手たちも0.16%に選ばれた中の一人なのです。私は、このポテンシャルを野球とは違ったフィールドでも最大限発揮できるよう応援したいと思いますし、実際に発揮できると思うのです。
だって、しつこいですが、0.16%ですよ?(笑)

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「スポーツバカ」でいいのか

ここで、この記事を読んでいるあなたを「引退する、あるいは引退したプロ野球選手」だと思って、私からお話があります。他のスポーツのアスリートであればご自分のスポーツに置き換えて、またアスリートでない方は、ご自分がプロ野球選手になったつもりで聞いてください。

実は、このお話はあなたの先輩方の引退したプロ野球選手のお話を伺っているときによく出るお話なのです。



「野球バカなので、わからないんです」
「小さい頃から野球しかしてこなかったので、それ以外何も知らないんです」



解釈によっては、
「ああ、野球一筋に打ち込んできたんだな」
「周りを気にせず無我夢中になるのは素晴らしい」という方がいらっしゃるかもしれません。


ただ、私の解釈は少々違います。
「あなたは、野球バカなどではありません。」
「野球がそれだけできたなら、他のことも必ずできます。」
と申しあげたいと思います。


この、「野球バカ」「野球しかやってこなかったから」という言葉には要注意です。
なぜかというと、(あなたは謙遜の意味も込めて発しているかもしれませんが)
この言葉を発することで、


「思考停止で考えないことの言い訳」
「できないことの言い訳」



になってしまう可能性があるからです。


どうして私はそのように考えるのでしょうか。
これには、普段私が感じていることと大きく関係があります。
あなたも、ニュースなどで耳にしたことがありませんか?



現役時代は、華やかな成績で、一生分の年俸も稼ぎ出したであろう一流のアスリート達が、トラブルで人生を棒に振ってしまうというニュースを。



もしかしたら、スポーツ界だけでなく、エンターテイメントの世界でもあるかもしれません。
どうして「たくさんお金があるのに」こんなことが起きてしまうのでしょうか。
その方達がだらしなかったから?弱かったから?


私はこう考えています。


世の中には、お金の稼ぎ方を教えてくれる人はたくさんいるが、お金の正しい使い方を導いてくれる人は少ない。



「きっとその人には、お金の稼ぎ方を教えてくれる人は周りにたくさんいたのだろう。当然、本人は努力だってたくさんしたと思う。でも、お金の正しい使い方を導いてくれる、信頼できるパートナーがいなかったんだろうな。」と悲しくなってしまうのです。
もし「野球バカで、他は何も知らなかった」結果がこうだとしたら、悲しい結末なのはなんともやりきれません。



これは、アスリートにとっては非常に重要な問題だと思います。ほとんどのアスリートは、大金を手にすると誰に相談して良いかわからず、多くは身内や恩師など近い知り合いに頼ることになります。しかし、身内・知り合いの方は、心は信頼できて誠実に対応してくれるかもしれませんが、残念ながらお金のプロではなく、そうした大金を扱った経験も少ないので、思うようなサポートが得られないことがよくあります。



本来なら、引退時ではなくむしろプロとして契約の時点、あるいはもっと若い選手時代から信頼できるお金のプロをパートナーとして見つけておくことが理想です。もしかすると、代理人・あるいはマネジメント会社などのエージェントがそれに近い存在になれるのかもしれませんが、残念ながらお金のプロとしての教育は受けていません。
私の知る限り、彼らが注力するのは高い年俸と好条件を獲得することであり(もちろんそれが彼らの大切な役割ですが)、そうして得たお金を引退後までを見据えた数十年という長期にわたって、どう正しく使っていくのかをアスリートにアドバイスできる代理人・エージェントは皆無です。(例えば、日本のプロ野球では選手の代理人は弁護士しか認められていません。言うまでもなく、彼らは法律、契約についてのプロであり、資産運用についてのプロではありません。)



現役時代にキラキラ輝いていた選手たちの、悲しいニュースを聞かなくて済むようになる世の中になってほしい、と願っています。
そして、私も微力ながらそのお手伝いをしていきます。

正しいお金の使い方を知るには、他人まかせではなく、あなた自身も勉強が必要かもしれません。
でも、そのことがあなたとあなたの大切な人の未来を守ることにもつながると思うのです。
お金を乱暴に使う人の周りには、残念ながら同じような人が集まってきます。


私見ですが、スポーツは頭を使わないと一流にはなれないと思っています。
あなたは「野球バカ」などではありません。きちんと学べばいいだけのことなのです。
知らないなら、これから知ればいいだけです。

Here and now, unfortunately, ends my journey on Pixabay on Pixabay

思考停止にならずに、前進

ぜひ、思考停止をせずに、前に進みましょう。「野球バカ」は禁句です(笑)
あなたが、お金の正しい使い方を導いてくれる信頼のおけるパートナーと出会えることを心から祈っています。
もちろん、それが私であるならば、喜んでお手伝いいたします。



今回は、プロ野球選手にフォーカスしてみましたが、他のスポーツ選手とお話をしていても、「〇〇しかやってこなかった」「〇〇以外は何もわからない」といった言葉をよく聞きます。この言葉は要注意ワードですね。



それから、機会があれば、女性アスリートのキャリアについても記事にしてみたいと考えています。


最後に、ファイナンシャルプランナーという仕事柄、どうしても「経済的に割りが合っているか」という目線になりがちなのですが、この多くのプロ野球選手の現実を見るとどう考えても、持っている才能と得られる報酬の「経済合理性」には全く割りが合いません(笑)
0.16%の高みに到達した方に対して、自分で選んだこととはいえ、世の中は厳しい仕打ちをするものだと個人的には思うのです。
でも一方で、ごくわずかな選手だけが得られる「才能に見合った報酬の経済合理性」を目指すのがプロの「夢」たるところでもあると思うので、それに向かってチャレンジする方達を応援したいといつも思っています。


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今回も最後までお読みいただき、どうもありがとうございます。また次の記事でお目にかかりましょう。



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